深淵の中で彼女は目覚めた。




どれほどの永い時だっただろう。彼女は微動だにしない。
やがて、美しい唇を歪め、肩を震わせながらくつくつと笑い出した。

「何故に!私は生きている!?」

大きく振り払った右手から迸った波動は、大気を切り裂き闇に飲まれ行く。

「何故に!私は再びこの姿でいるのだ?!」

問い質したいことは山ほど有る。
だが、その相手がこの場所に居る筈も無い。
ただ、次から次へと喉へ込み上げる憤怒を遠い闇に吐き棄てる事しか出来ずに。

「あの時、貴様はルフィアの中から私だけを切り離した!
エリーヌという魔力と記憶と神性を!
私を抉り出しておきながら、何故復活させる!?
その前もだ!そう、何故私は消えなかった?
貴様の力でマキシムは我らに匹敵、それ以上の波動で我らを屠った筈なのに。
…私が蘇れば、あとの三神も復活する。
貴様はまた、同じ事を繰り返せというのか!!?」

悲鳴…だった。血を、吐くような。






「………いいだろう。貴様が何を考えているかは知らぬが、それならば此方にも考えがある。
貴様が思うような道化の芝居であると良いな…
………また、相ま見えようぞ。デュアルブレードよ…」

浮かべた酷薄な笑みの下には、どれほどの決意と悲壮が存在したなど誰も知る由も無い。

「その為にはお前の力が要る…解っているな」

こくり、と頷き、そして彼女はゆっくりと瞳を開く。



『我はエリーヌ。殺戮の神なり』



ひとつの唇からふたつの声が吐息のように漏れた。
歩き出した彼女は、一度足を止め、肩越しに振り返る。

ほんの一瞬。

再び歩き出すその足取りには、欠片ほどの迷いも無かった。





三度行なわれる運命の出会いは、三度悲劇への道を切り開く。










リサイクル、其の2。
これは「2」の後「蘇る伝説」までのエリーヌ様(とシーナ)の話です。
彼女って本当、辛い役割を背おわされていますよね。
消滅出来ればいっそ楽かもしれないのに、何度も復活しては滅ぼされる為に主人公の前に現れる…

シーナも痛かったです。
一度クリアして再プレイすると彼女の言葉のひとつひとつに泣かされます。
ああ、大好きだ!
大好きですとも!!
PS2でのリメイク、果てなく望み続けます!



20050303UP


ack