思い出すのは容易い。
                 だけど、余り思い出したい事じゃない。
                 …それに、俺の記憶はところどころ抜けているから。
                 正しく語れないと思う。





                 はっきりと覚えているのは、叫び続けている俺自身。
                 痛みも感じず。
                 体の半分を真っ赤に染め上げて。
                 声が嗄れても、涙が涸れても、ただ叫び続けた。









                  ―――――――――― 彼女の名、を。










                 半狂乱になって暴れる俺を押さえつけたネス。
                 何も言わず、ただ彼女の後を追おうとする俺を羽交い絞めにして。
                 食いしばった唇からは血が滲み、止め処なく涙を流しながら。
                 それでも、俺を放さない。



                 信じられないくらい、強い力で。



                 それでも俺はもがき続けた。
                 そうでもしないと、本当に狂ってしまいそうだったから。



                 崩壊する遺跡から俺たちを護るネスの召喚術が―――――



                 彼女との距離を断絶する。





































                 …君に泣き言が届かないように。