17話
モーリン:あ〜っ!腹のムシがおさまんないよっ!!
マグナ:落ち着けよ、モーリン
モーリン:だって、悔しいじゃないのさ!?
余所から来たヤユに好き放題に、街中を引っかき回されてさ
レイムのヤツも許せないけど、もっと許せないのは…
あんな野郎の口車に乗せられちまった街の連中だよっ!?
マグナ:!?
モーリン:本当にファナンのこと大切に思ってんのならさぁ…
どうして、どうして逃げないで、戦おうとしないんだいっ!?
故郷を慕う気持ちならどの街の奴らにだって負けないってのが
ファナンっ子の心意気だったのにさぁ…
マグナ:モーリン…
モーリン:あたいは…逃げたりなんかするもんか!!
一人でも、最後まで戦ってやる…ファナン育ちの意地を見せてやるんだ!
マグナ:一人になんかさせたりしないさ
戦う時は、俺たちも一緒なんだからなモーリン?
モーリン:マグナ…
マグナ:見せてやろうぜ?デクレアの奴らに俺たちの心意気ってやつをさ!
モーリン:ん…っ
…あいよっ!
−モーリンにとってこの街は、本当に大切な場所なんだな−
18話
モーリン:はあ…海賊が襲ってきた時となぁんにも変わりゃしなかったね…
結局、ミニスのおふくろさんに頼ることになっちまった
マグナ:そんな風に考えなくてもいいんじゃないかな?
モーリン:え?
マグナ:黒の旅団を撤退させたのは、ファミィさんの召喚術だったけどさ
街を守ろうとした気持ちなら、モーリンや俺たちだって、負けてないだろう?
モーリン:あ、あたりまえだろ そんなのはっ!?
マグナ:だったら、胸を張ってたっていいんじゃないかな?
周りがどう見るかってことより、大切なのは自分がどう思えるかってことだと思う。
だから、モーリンが引け目を感じることなんかないのさ
モーリン:うん…そうかも、知れないね
−それに、モーリンが一生懸命だったことはちゃんと俺が見てたんだからさ…?−
19話
モーリン:あ…マグナ
マグナ:どうしたんだよ?デグレアから戻ってきてから、なんだか元気がないけど
やっぱり、そんな格好でいたからカゼでもひいたのか?
モーリン:……
マグナ:どれどれ?
モーリン:きゃっ!?あわわわわわっ!?
マグナ:ほら、なんだか熱っぽいぞ 顔だって赤いし
モーリン:そそっ、それはっ!違うんだってばさ もぉ…っ
マグナ:???
モーリン:別に身体が変ってわけじゃないよ
マグナ:だったら、なにが理由なんだ?
モーリン:聞いても…笑わないどくれよ?
マグナ:うん
モーリン:こわいんだよ…あたい…
マグナ:(!?)
モーリン:あたい、今までは目の前で戦う相手しか見てなかった。それでいいと思ってた
でも、気づいちまった 腕っぷしの強さとは全然、違う力ってもんがあるって…
マグナ:モーリン…
モーリン:あの連中のやり方は悪意に満ちてる
殴ったって、そいつはどうにもなんない!
そう思うと、握った拳が震えちまうんだよ
あははは…情けないよね?あたいの取り柄ってばそれだけなのにさ
マグナ:別に、こわくったっていいじゃないか?
モーリン:…え?
マグナ:ガレアノたちは悪意を武器に戦いを挑んでくる
だけど、俺たちが同じ武器で戦う必要はないさ。俺たちなりのやり方でいいんだ
モーリンはモーリンの戦い方をすればいい 迷うことなんてないよ
もし、あいつらの悪意に負けそうになったらその時は、俺やみんなを頼ればいい
ちゃんと、支えてあげるからさ?
モーリン:マグナ…
ありがと…マグナ おかげで、なんだか楽になれたよ…
−うん…モーリンには、やっぱそういう元気な顔が一番似合ってるよ−
20話
モーリン:しかし、驚いたよ やけに帰りが遅いって思ってたらさ
アメルが背負われて帰ってくるんだもんね
マグナ:俺たちを守るためにまた、あの光を使ってくれたから…
それで、彼女の様子はどうなんだ?
モーリン:前の時とおんなじさ 消耗した気は、ストラで補給しといたよ
マグナ:悪いな、モーリンにも負担かけちゃって
モーリン:なにいってんだい こんなの、あたいにとっちゃあ、苦にもなんないことだよ
ストラを使う格闘家は普段から、呼吸で自然の気をとりこむように訓練してるからね
ちょっと休めば、すぐ元気になるんだよ
マグナ:そうなんだ
モーリン:心配なのは、むしろアメルのほうだよ
前にも言ったけど あの子の奇跡の力はね自分の気を消耗して発揮されてんだよ
訓練したことのないあの子の身体にそれが、どれだけ負担になっているのやら
マグナ:うん…
モーリン:まあ、でもあたいの心配のしすぎかもしんないなあ
なんてったってアメルは天使の生まれ変わりなんだ
そのへんのところは多分、あたいたちよりうまい具合にできてるんだろうしね?
マグナ:うん…きっと、そうだよな
−でも、モーリンが心配してくれたことも一応、気をつけるようにしておかないとな−
21話
マグナ:結局、最後まで戦うことしかできずに終わっちゃったよな 俺たち…
モーリン:そうだね…
だけど、あたいはそれを後悔するのは間違いだと思うよ
あの時は、あれしか方法がなかったんだよ 無理に黒騎士と話をしたところで
あいつはそれを聞ける状態じゃなかったよ そうだろ?
マグナ:うん…
モーリン:あたいたちの選択は絶対に間違ってない
そのあと起きちまったことは、また別の話さ
悔しいのは、あたいも一緒だし…
マグナ:モーリン…
モーリン:次は、あの悪魔たちを徹底的にぶっとばしてやるからね!
あたいたちにはさ そうする権利あるだろ?
マグナ:ああ…そうだな!
モーリン:そうそう、そうだよ あんたはそうやって前を向いてないとね!
マグナ:よーしっ!
モーリン:女としちゃ、やっぱそのほうが頼りがいがあるしね…
マグナ:え?
モーリン:あ、わわっ!? なんでもないよっ!!
−この気持ちを力にして次は絶対、悪魔たちを倒してやるぞ!−
22話
モーリン:マグナ あんた、最初に会った時に比べたらホントに強くなったもんだよねえ…
マグナ:そ、そうかな?自分では、なんにも変わっちゃいない気がするんだけど…
モーリン:自分のことだからね 自分じゃわかんなくて当たり前さ?
でも、あたいにはちゃんとわかるんだ
最初はなんだかのほほんとしててさ 頼りになりそうもないと思ってたのにね
今じゃ、まったくその逆に思えるんだ だから、安心して命を預けられるんだよ
マグナ:あははは…
モーリン:あ!?別に、あんたのことバカにしてるわけじゃないんだよっ!?
た、頼りなくても頼れても、あんたはっあんたなんだし…
そりゃ、あたいだって女だから、頼れる男のほうが、いいけどっ?
だからって、あんたが頼りないまんまでも! あたいの気持ちは変わんないし…
マグナ:え?
モーリン:あ…!?
マグナ:モーリン…お前、もしかして?
モーリン:う、ううう…っ 黙ってる、つもりだったのに…
あたいって、どうしてこう、バカなんだろ? あああぁぁ〜!?
マグナ:うれしいよ
モーリン:…え?
マグナ:モーリンの気持ちを教えてもらえて
モーリン:迷惑じゃ、ないの?
あたいみたいにガサツで、乱暴者でデカイ女なんかに好かれて…
マグナ:俺も、同じだよ?
どんな女の子だろうとモーリンへの気持ちは変わったりしないさ
モーリン:よかったぁ…っ
マグナ:ほら、泣くなよ いつもみたいに元気に笑って…?
モーリン:う、うんっ!
…よーしっ!いっちょ、気合を入れて、メルギトスをぶっ飛ばすよっ!?
マグナ:うん、頼りにしてるぜモーリン
モーリン:あいよッ!
ED
小屋にて
モーリン:…マグナ?
なんだい、なんだい ぼーっとしちまってさ
ほら、しゃきっとおしよっ♪
マグナ:げほっ!げほっ!?
モーリン:ありゃ…ちょいと強すぎた?
マグナ:ひどいよ、モーリン いきなり背中を叩くなんてさあ…
モーリン:ううっ、ゴメン…
でも、あんただって悪いんだよ
さっきから、さんざん呼んでんのに、ずっとうわのそらでさあ
ここんとこ、毎日そんなんばっかだもの
一緒にいるあたいまで暗くなっちまうよ
マグナ:そっか…俺、そんなにぼーっとしてたんだ…
(たしかに、このところあまりよく眠れてないしな…)
モーリン:夕べだって、あんたうなされてたし
マグナ:え?
モーリン:何度もアメルの名を呼んでたよ…
すごく、悲しそうにさ
マグナ:ゴメン…うるさかったよな
モーリン:それは、別にいいんだけどさ…
やっぱり、まだあの時のことは忘れられないかい?
マグナ:うん…
……
モーリン:ほら、またぁ!そうやって黙りこむ
しょうがないねぇ
マグナ ちょいと、そこらを散歩しに行こうよ
マグナ:散歩か…
モーリン:じっとしてるから余計なことばっかり考えちまうんだよ
外の空気を吸えばちっとは、気分もしゃっきりするさ
マグナ:うん、そうだな
大樹の前にて
モーリン:早いもんだね…
あれから、もう季節がふたつも巡っていったなんて…
マグナ:そうだな…
モーリン:あたいがここであんたと暮らすって決めたあの日からそんなに経つんだね
そして…
アメルが、この樹に姿を変えちまってからさ…
マグナ:聖なる大樹…
この樹がアメルだって知っているのは、多分俺たちだけ…
あの時から、ずっと邪悪な魔力を吸収して浄化し続けているのも
モーリン:あたいたちは、あの時この樹のおかげで明日を奪われずにすんだんだ
人間のことをずっと好きでいてくれたアメルのおかげでね
本当に、いくら感謝しても足りないよ
マグナ:うん…
モーリン:だけどさ…いい加減に、そろそろ起きてほしいねえ
マグナ:うん、俺はね あの時、たしかに聞いた気がしたんだよ
帰ってきますって そう言ってくれたアメルの声を…
それに、ネスだって言ってくれたんだ
アメルは生きてる この木の中で眠っているだけだって…
でもさ、時々…不安になっちゃうんだ
あれは錯覚だったんじゃないかって…
モーリン:絶対に帰ってくるさ
だって、あんたがこうやって、ここで待ってるんだもの
マグナ:モーリン…
モーリン:信じることがあんたの一番の得意技…だろ?
マグナ:うん…そうだな
聞こえるかい、アメル
君の愛した世界は今もこうして息づいているよ
相変わらず、俺たちは不器用な生き方ばかりしかできてないけど…
でも、君は言ってたよね
人間は自分自身の力だけで変われるんだって…
そんな人間のことが愛しいって…
だから、俺も信じるよ
いつかきっと…誰も悲しまずにすむ未来がこの世界に訪れるって
だから…ずっと、ずっとこの場所から、俺たちを見守っていてくれるかい?
なあ?アメル…
マグナ:ふぁ、あ…っ
なんか、ほっとしたら急に眠くなってきちゃったな…
モーリン:ここで昼寝してったらどうだい?
あたいがひざ枕してやるからさ…
ゆっくり、身体を休めたほうがいいよ
マグナ:そうだな…それも悪くないか
モーリン:そうだ!どうせなら眠る前に、あたいがストラをかけたげるよ
ほら、じっとして‥
マグナ:ん…
なあ、モーリン?
モーリン:なんだい?
マグナ:ありがとな…モーリンがいてくれて俺、すごくうれしいよ
ひとりぼっちだったらきっと、もっとふさぎこんでたから
モーリン:あたいは、ただあんたの側にいたいと思っただけさ
でも、そう言ってもらえると、ちょっとうれしいかな…
ほい、おしまい!
ゆっくり眠ってちょっとでも、元気になっておくれよ
−あたい あんたの笑った顔がね、その…すごく好きだなって思ってんだからね−
「グーでパンチ」
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