ナツミが言い出す事は何時も唐突。 今日も不意に、あ、そーだ、と手を打ち、リプレに何か聞いてたかと思うと、屋根裏部屋で何かしている様子。
どたばたがらがら、と結構派手な音はとても掃除なんかは連想できない。しばらくして。
「あったぁ!」
彼女が喜び勇んで持って降りて来たのは、一着の服と鞄。
「…これは?」
もっともなクラレットの質問に、得意満面にナツミは答えた。
「うん!あたしのガッコの制服だよ!」
「……ガッコ?」
「ほら、教えたじゃない。あたしくらいの年代の子が勉強するところ」
「ああ、『学校』、でしたね」
「うん!で、これはその制服なんだけどね。あ〜、なんか懐かしいなぁ」ハンガーに掛かったそれを高く持ち上げて、郷愁の瞳で見つめるナツミに、クラレットの心がちくり、と傷む。
「…すみません、ナツミ」
「え…ええっ!?やだなぁ。別にクラレットに謝って貰うために出してきたんじゃないんだってば」
「それなら、一体……」
「着てみて!!」
「………………はぁ?」これまた唐突な申し入れに、フリーズすること数秒。
ようやく絞り出した声が余りに間抜けだと、心の何処かで感じながら。「だからさ、これ、着てみてよ。絶対似合うと思うんだぁ」
「…え、あの…」見た感じ、今のナツミの服にも似ている。
正確に言えば、今の服こそがこの『制服』を元に作られたに違いない。
そう推測するクラレットの手に、ナツミは制服を押し付けた。「あの…どうして私がこれを着なくてはいけないのですか?」
またまたもっともな質問に、ナツミはにっぱり笑ってきっぱり即答した。
「あたしが見たいから!」
「……………」とてもではないが、その言葉と笑顔に勝てる術をクラレットは持っていなかった。
「わぁ。やっぱめっちゃくちゃ可愛い!似合う、似合う!!」
「そ、そうですか…???」短いスカートに恥じらいを隠せず、膝の辺りを一生懸命隠そうとしているクラレットには、とてもではないが、似合っているかどうかの判断なんか出来ない。
逆に、ナツミは鞄を持たせてみたり、中の教科書を見せたり、と楽しさ全開、フルスロットル状態。
彼女を着替えさせられた事に大満足のナツミは、うんうん、と頷きながら、「髪を纏めてみたり、眼鏡が有ったら、もっと面白いと思うんだけどなぁ。ちょっと残念」
「あのですね…」
「これだけこの制服が似合うんなら、絶対ブレザーも似合ったのに」
「ぶれざぁ?」ブレザーと黒のハイソ、と…。
指折り数えるナツミに小首を傾げてクラレットは問う。「あ、うん。制服にはさ、だいたい2種類有って、これが『セーラー服』と言って、もう1つの種類がブレザー。
…クラレットになんか良く似た感じの友達がその学校に行ってたなぁ、って思い出したんだ」
「そう、ですか」自分に似た雰囲気の友達とは、どんな方だったのだろうかと、ふと思う。
「まあ、あたしはクラレットのミニスカ姿見れて大満足なんだけどさ」
「あ…もう、着替えてもいいですか?」
「なに言ってるの!これからみんなに見て貰うんだから!」
「ええええええ??!」
「さあ、行くよ」
「ちょ…ちょっと待ってください。本当に!」
「だぁ〜め!!」
「なっ、ナツミ!!?」背中を押され、問答無用で部屋から連れ出されるクラレットの、困惑した叫びがフラットに響く。
あとで、もう、絶対に着ませんから!と怒っている彼女が居たらしいが、ナツミの願いをやっぱりどうしても断りきれず、トリスたちの前で再び袖を通してしまうのは、また他の話。
「ところでさ、キツイところとかナイ?」
「あ…此処と此処が、ちょっとそうですね」
「……どうせあたしは、ぺったんですよーだ…」…そんな会話も有ったみたいで。
参加者4人で姫の制服ネタを絵と文で書きまくる、という非常に楽しいネタでした。
ナツミさんやアヤの制服を着た姫に眩暈しながら、物凄い勢いで書いた覚えが有ります。
恥らって膝を隠す描写がウケてました(笑)
「アメとムチ?」に匹敵する書き易さと楽しさでしたね。
20040208UP
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