13話
台所
アメル:お祭りに、あたしを?
トリス:うん、もし良かったら一緒に見物しない?
アメル:はいっ、いきますっ!連れてってください
トリス:(すごい喜びようねぇ)
アメル:えへへ…あたし、村のお祭りしか知らないから すごく楽しみです♪
あ、でも…洗い物をすませないと
トリス:だったら、手伝うわ
二人でやったほうが早いでしょう?
アメル:…すみません
それじゃ、洗ったお皿拭いてくれますか?
トリス:ええ、わかったわ
祭り会場
アメル:うわあ!ほらほらトリスさん あれ、見てください!
トリス:あはは、アメルったらまるで子供みたいにはしゃいじゃって
アメル:もぉ、だって…本当にすごく楽しいんですもの!
パレードは見ていてあきないし、さっき買った焼きイモさんだって、ほら?
こんなにほくほくで バターもたくさんしみてて…
んーっ、とってもおいしくて幸せですっ
トリス:お祭りで食べる物っていつもより、ずっとおいしいものね
他にもいろいろ試してみるといいわ
アメル:あ…!トリスさん あれやってみません?
トリス:へえ、くじ引きハズレなし、か…
そうだな…
→やってみよっか
→アメルもやろうよ
やってみよっか
トリス:このヒモを一本引けばいいのね?よーし…
アメル:がんばってください!
トリス:よっ…あらら?
おっちゃん:はいよ、ねえちゃん!
24等賞は、ファナン名所、時計塔の置き物だよっ!
−時計塔の置き物を手に入れた!−
トリス:……
アメル:……
トリス:…いる?
アメル:あ、ははは…あたしは、遠慮しときます、はい…
アメルもやろうよ
トリス:このヒモを一本引けばいいのね?
よーし…
アメル:どれにしよっかなあ?
トリス:よっ…おっ?
おっちゃん:7等賞は豪華な髪飾りだ!おねえちゃん、これは価値もんだよぉ?
アメル:よかったですね トリスさん
あたしは、これ… えいっ!
おっちゃん:はいよ、お姉ちゃん!5等賞は、かわいい召喚獣のぬいぐるみだよっ!
トリス:かわいいじゃない それ…
そっちの方が良かったかな…
アメル:……
…これトリスさんにさしあげましょうか?
トリス:えっ、でもアメルが当てたものよ
アメル:いいんです
トリス:なんか悪いなぁ…あ、そうだ!
それじゃ、これと交換しよっか?
アメル:いいんですか?
トリス:ええ、あたしは短い髪型の方が好きだし
アメルが使ったほうがきっと似合うと思うわ
−ぬいぐるみを手に入れた−
アメル:くすっ、なんだかプレゼント交換してるみたいですね
トリス:うん、そうかも
銀沙の浜
アメル:うわあ…
トリス:アメルは、花火を見るのは初めてなの?
アメル:ええ…こんなに、キレイなものだったんですね
すごいなあ…
トリス:ええっ、たしかにここまで盛大なのはあたしも初めて
アメル:トリスさん
トリス:ん…?
アメル:あたし、こうして生きてこられてすごく幸せだって思います…
何度も落ちこんで弱音をはいて いろんな人に迷惑をかけて
本当になにもかもイヤになったりもしたけれど、でも…
つらいことだけじゃなかったから
トリス:アメル…
アメル:今日みたいな楽しい思い出を、あたしもっともっと作りたい
だから、負けません 負けないようにがんばりますから だから…
最後まで、見ていてくれますか?
トリス:ええ…
楽しい思い出をみんなで作っていきましょう
つらいことを思い出す暇なんかないくらい めいっぱいにね?
アメル:…うんっ
14話
トリス:おじいさんの傷の具合は どうだったの?
アメル:初めに負った傷が無理をしたせいでひどくなってました
よほど、無理をしていたんでしょうね
トリス:いたたまれなかったんでしょうね…村が、こんな目にされたから
アメル:そうですね…
傷を治すために おじいさんの心に触れた時に、あたし感じたんです
おじいさんが この村のことをどれだけ大切に思っていたのか
ロッカや、リューグそれに、あたしをどれだけ心配していてくれたのかを…
トリス:アメル…
アメル:やっぱり あたしはおじいさんの孫娘です
血がつながってなくたって、そんなこと関係ありません だって…
ちゃんと心がつながっているんですから…
それだけで、あたしは充分に幸せです
トリス:ええ、そうよね
−つちかってきたキズナの強さはそう簡単にほころびるものじゃないもの…−
17話
アメル:私のしたことがまた、みなさんに迷惑かけちゃいましたね
トリス:気持ちはわかるわ
あたしだって、まだ信じられない…
アメル:レイムさんが…黒の旅団の一員だったなんて…
トリス:でも、ひとつだけわかったことがあるわ
かばおうとしたアメルを狙って、召喚術を使った時
あの人…本気だった…
アメル:……
トリス:もしも、またあの人が同じことをするのなら…
その時は、あたしあの人を許さないわ!絶対に…
アメル:でも…
それでも、あたし…
−信じたい、のね…−
18話
トリス:ルヴァイドのこと アメルは、どう思う?
アメル:あたしには、騎士の在り方なんてものはわからないです
でも…
あの人が、どこか無理をしているということは感じとれました
トリス:うん、あたしもそう思った
黒騎士は、自分の心を無理に殺そうとしてたような気がする…
(反逆者の汚名って、いったい、なんのことなのかしら?)
アメル:でも、思うんです
あの人は、ちゃんとあたしたちの言葉を受けとめてくれた
だから、きっと戦う以外の方法でわかりあえるはずです
あの人の心を縛りつけているものさえ、断ち切ることができれば きっと…
−そうよね…それさえわかれば きっと…!−
19話
アメル:それじゃあ、あの方が言ってた反逆者の汚名っていうのは…?
トリス:キュラーたちがでっちあげた。濡れ衣だってことじゃないかな
鷹翼将軍レディウスはたった一人で、祖国を覆い尽くそうとする闇と
戦っていたのよ
普通の人にはできることじゃないと思うわ
アメル:ルヴァイドさんはそんなお父さんの本当の姿を、知らされずにいたんですね
かわいそうです…お二人とも…
お二人だけじゃない 他のデクレアの兵士のみなさんだって
様々な思いと共にこの戦いに参加してるはずなのに
それを自分たちのいいように利用しようだなんて…
トリス:だから、あたしルヴァイドたちに全部話そうと思ってるの
アメル:トリス それじゃ…?
トリス:ええ、こんな戦いに意味なんてないわ
やめるように、説得をしなくちゃ
黒騎士たちが、あたしの言葉を信じてくれるかどうかはわからないけど…
アメル:だいじょうぶですよ!
貴女の言葉ならきっと あの人たちに届いてくれるはずです
だって、貴女の優しい言葉は、今までにたくさんの人たちを救ってるんですもの
トリス:アメル…
アメル:あたしが保証しますよ だって、あたしは他の誰よりも…
トリス 貴女のその優しさに救われてるんですもの
トリス:ありがとう、アメル
−あなたにそう言われるとなんだか、自信がわいてくるわ…−
20話
アメル:ガレアノたちはやっぱり、レイムさんの命令で動いてたんですね…
しかも、その正体が悪魔だったなんて
トリス:ギブソン先輩の話だと人間にとりついた悪魔っていうのは
そう簡単に見わけることができないの
気づかなかったのも無理はないわ
アメル:ええ…
トリス:だけど、これでもうはっきりとわかっちゃったわね
デグレアに関する一連の事件は、あの人の手で引き起こされた
アメル:あたし…信じられません…
信じなくちゃいけない そうわかっているのに
信じたくない…っ
トリス:アメル…
アメル:こわいんです!
あの人のことが…わからなくて…
どうして、どうして あんなひどいことして笑っていられるの!?
トリス あたし、わからない?わからないよぉ…
トリス:泣かないで、アメル
あたしだって わかんないよ
どうして、あの人がこんなおそろしいことをしているかなんて
わからないし…こわい…
アメル:トリス…
トリス:でもね、アメル あたしたちは知ってるのよ
あの人のしたことが どれだけの人たちを傷つけたかってことを
アメル:…!
トリス:だから、あたし…あの人を止めてみせる
どんな結果になるかはわからないけど、でもほっとくわけにはいかないもの
アメル:そう、ですよね…
あたしたちが止めてあげなくちゃいけないんですよね
トリス:うん…
アメル:ごめんなさい…泣いたりして
だけど、これでもう最後にしますから
約束しますから
−終らせてみせるわ あなたがもう、泣かなくてすむように…−
21話
アメル:ねえ、トリス
あたしって バカな女の子ですか?
トリス:へっ?
アメル:だって、ほら…
天使だったくせにレイムさんの正体も気づかなかったし
ロッカたちにもよく言われたんです アメルは、人のこと信じすぎるって
トリス:(それは、バカはバカでも、バカ正直っていうんじゃ…)
アメル:困りますよね これじゃ
これから戦う相手は人をだますのが得意な悪魔なのに…
治さなくちゃいけないですよね?
トリス:(アメル…)
そのままでいいのよ アメル?
アメル:でも…
トリス:人を疑うことなんて無理におぼえるようなことじゃないわ
たしかに、それで傷つくこともあるかもしれないけど
できるなら、あたしはアメルには今のままでいてほしいな
アメル:トリス…
トリス:それにほら よく言うじゃない?
バカな子ほどかわいい…ってね?
アメル:む…
それって、なんだかあんまりほめてない気がするんですけど?
トリス:…やっぱり?
アメル:もぉーっ! トリスっ!?
トリス:きゃっ、あたたっ!?
ちょっと、なにもそんなにポカポカ殴らなくたって…
アメル:バカ、バカ、バカっ!
あはっ、あはははっ♪
−ま、これで笑ってくれるのなら いいよね…?−
22話
トリス:フリップ様 意識を取り戻したみたいよ
アメル:よかった…
トリス:でも、どうしてアメルが助けたこと隠しちゃうわけ?
ふらふらになるまで癒しの力を使ったのに どうして…
アメル:あの人のためには それが一番だからです
それに、あたしが好きでやったことだし
トリス:ねえ、アメル…
あなたはどうしてそんなに優しいの?
聖女だから? それとも、天使の生まれ変わりだから?
アメル:ううん…トリス
あたしはただ 自分のもらったものをわけているだけです
周りの人たちが あたしにくれる優しさ
それがあったかくて とてもうれしいから
みんなに同じ気持ちを感じてほしいんです
独り占めしちゃうよりも、そのほうがずっと素敵だもの
トリス:アメル…
アメル:あたし、やっぱり人間が大好きです
奪ってばかりだって レイムさんは言っていたけれど
与えることだって ちゃんと知っています だって…
トリス 貴女が、たくさんのあったかい気持ちを与えてくれたから
あたしは今、こうしてここにいることができるんですもの
ありがとうございます
トリス:そ、そんな…っ お礼だなんて、なんか照れくさいよぉ!?
アメル:……
トリス ひとつ、お願いを聞いてくれませんか?
トリス:なぁに?
アメル:この戦いが終ったら あたしを、貴女の生まれた場所へ連れていってください
トリス:え…
アメル:見てみたいんです 貴女が暮らしていた本当の故郷を
貴女のこと、もっといっぱい知りたいから
ダメですか?
トリス:ううん!そんなことないっ
約束するわ、アメル
そのためにも、絶対に勝ってみせるから!
アメル:ええ、約束ですよ?
←Back Top End