3話
リューグ:あいつがアメルを置いていくなんてな
      とても信じられねえぜ
トリス:ええ、あたしはてっきりアメルも連れていくのかと思ってた
リューグ:はッ!自分一人よりテメエらに任せといたほうが、安全だって考えたんだろうよ
      あの野郎の、そういう妙に冷静なところが俺には気にくわねぇんだ
トリス:でも、あたしたちは戦いを避けないってロッカに言ったのよ?
リューグ:戦うのは構わないがアメルのことは絶対に守れっていうのさ
      ったく、厄介な課題を置いていきやがって
      とっとと、ジジイを見つけて戻って来い バカ兄貴が…
−口ではああ言っててもやっぱり兄弟なのね二人は…−




4話
リューグ:ネスティの野郎が腹立てるのも当然だな
      テメエもアメルもつくづく危機感ってものがねぇんだからな
トリス:うう…悪かったわよ…
リューグ:だがまあ、これはこれで別に構わねぇか
トリス:え?
リューグ:ニブい野郎だな?
      あのガキの面倒を見るのに夢中になってりゃアメルの気もすこしは紛れるだろうがよ
トリス:ああ、そっか…
リューグ:アイツは俺たち三人の中で、末っ子みたいに扱われていたせいかよ
      やたらと他人の世話を焼きたがるのさ 年下に対しては特にな
      聖女にされちまってからは、そういう機会も減ってたからな
      とりあえずは、好きにさせておくさ…
−アメルは、ミニスを妹みたいに思ってるのかもしれないわね−





5話
トリス:結局、リューグが心配していたとおりの状況になっちゃったわね
リューグ:まあな…
トリス:けどさ、なんとか無事に帰ってこれたんだし
    これはこれでよかったんじゃないのかな
リューグ:そうじゃねぇよトリス
      俺たちが無事に帰ってこれたんじゃねぇ
      あのルヴァイドって野郎がな、俺たちを無事に「帰した」ってのが本当だ
      ハッ!見逃してもらったんだよッ!?
      忌々しいがな…それを認めなけりゃあ俺たちは今頃、ここにはいられねえ…
トリス:リューグ…
リューグ:ナメられたんだよ 俺たちはあの野郎に
      今でなくとも、本気を出せばアメルを奪えると思ってやがる
      許さねえ…絶対に許さねぇッ!
      後悔させてやる…俺に時間を与えたってことをな…!
−見逃してもらった、か たしかにリューグの言うとおりなのかもしれないな…−




6話
トリス:すごいわよ、リューグ 黒騎士に一撃あびせるなんて!
リューグ:……
トリス:あれだけ毎日、練習してたもんね…
    当たり前といえば当たり前かな?
リューグ:ハッ!なにが当たり前だよ?
      俺はあいつを殺す気で向かっていったんだ
      それがどうだ?カブトひとつを弾いただけで、傷ひとつさえつけられねェ!!
トリス:でも…
リューグ:ぶっ倒さなけりゃあ意味ねェんだよ…
      じゃなきゃ、俺のやってることなんてなんの意味もねェ!!
      意味ねェんだよ…
トリス:リューグ…
−リューグのしようとしていることは本当にただの復讐なのかしら?−




7話
リューグ:今日のことは、まずヤツらの耳に入るだろうな…
トリス:ええ、あれだけ派手に立ち回ったら間違いないと思う
    疑われる前に、早く出発しないと…
リューグ:ああ…連中の餌食になるのは俺たちの村ひとつでたくさんだ
      あんな光景は二度と見たくねぇよ 俺は…
−あたしたちの事情であの人たちに迷惑はかけられないもんね−




8話
リューグ:あのガレアノって野郎たぶん、生きてるぜ
トリス:そんな!?だって、レナードさんの銃は命中したし
     あんなに高い砦から真っ逆さまに落下して無事なはずが…
リューグ:だが、死体は無かった
トリス:それは…
リューグ:それだけじゃねぇ
      アメルの身体から光が放たれた時になあの野郎、死体と同じように苦しみやがった
      俺たちはなんともねえのにな…
トリス:それじゃ、リューグはガレアノが人間じゃないっていうの!?
リューグ:はッ、それはお前らのような召喚師がお得意の分野だろうが?
      素人のオレの考えだ 別に真に受けなくてもかまやしねぇよ…
−人間じゃなかったらガレアノはいったい何者なんだろう??−




9話
リューグ:クソジジイがッ!!
      どういうつもりであんなデタラメをアメルに吹き込みやがったんだ…
トリス:落ち着いて、リューグ それにまだデタラメと決まっちゃ…
リューグ:はッ!この状況を見て、まだそんなことが言えるってのか?
      つくづく、テメエもおめでたいヤツだぜ
トリス:リューグっ!?
リューグ:くッ!
トリス:あ…!? ごっ、ごめん…
リューグ:へッ…キレイゴトだけを信じてちゃなァ…
      報われねぇんだよッ!
      よぉく おぼえとけ…!
−それでも…あたしは信じたいのよリューグ…!−





10話
リューグ:これで、完全にジジイのウソが確定しちまったな
トリス:……
リューグ:で、どうするよ?これから
トリス:とりあえず、デグレアの動きを調べてみるつもり
     その上で、あいつらが手を出せない場所にアメルを連れていくわ
リューグ:そんな場所があるとは思えねえがな…
      最悪、作ってやるさ この俺の手で…!
−たとえ黒騎士を倒したとしてもそれで終わりじゃないのよ リューグ…!?−




11話
リューグ:結局、あの騎士もまんまとハメられたってワケだ
      あの野郎…っ!つくづく、ムカつくようなことばかりしやがって!!
トリス:でも、リューグ ビーニャが攻撃を始めたあの時…
     イオスたちははっきりと命令違反だって叫んでた
リューグ:ハッ!そんなもの事前に芝居を決めておきゃあ、どうとでもなるだろうがッ!?
トリス:芝居…
リューグ:部下の暴走だってことにしちまえば、自分の名に泥をかぶる必要もねえ
      あの野郎の考えそうなことだぜ…
−本当に、リューグが言うように芝居だったのかしら?−




12話
トリス:リューグの予想してたとおり、ガレアノは生きてたわね?
リューグ:はッ!別に当たったところでうれしくもありゃしねぇ…
      やっかいな敵が増えただけだからな
トリス:ええ…
リューグ:連中がバケモノを使って攻めてくるっていうのなら
      俺もそれなりの覚悟で迎え撃ってやるさ
      召喚術なんかに頼らなくても、人間は鬼になれるんだ…
      それを、あいつらに思い知らせてやる この俺の手でなッ!
トリス:リューグ…
−本当にそれでいいの?本当に…−




13話
 銀沙の浜
リューグ:ハッ、祭りなんてガキじゃあるまいし…
トリス:でも、リューグはこういう街の祭りって初めてなんでしょ
     一度くらい、見といても損はないと思うけど?
リューグ:……
トリス:アメルのことなら心配いらないって フォルテやケイナと先に出かけたわ
リューグ:…稽古の相手だ
トリス:は?
リューグ:打ち込み稽古の相手を戻ってきてからやるって条件なら
      テメエにつきあってやるって言ってんだよ
 
 街の中
トリス:えいっ!って、あれっ? またハズレ…
リューグ:なにやってんだよテメエは
トリス:うるさいわねぇ こう見えて、なかなか難しいのよ輪投げって…
リューグ:難しいというより先に、すこしは上達してみせやがれ
トリス:むぅう…おじさん、もう一回!
おっちゃん:はい、毎度っ
リューグ:俺にも一回分だ
トリス:えっ?
リューグ:テメエに任せとくと全財産すっちまいそうだからな…
      いいか、よく見とけ?
      …!
トリス:い、一発でとった!?
リューグ:手首を変にひねるから明後日の方向に飛んでいっちまうんだ
      いいか…?
トリス:ははは、リューグのおかげで大漁よぉ
     しかし、輪投げが得意だなんて意外よね
リューグ:別に…大したことじゃねえ
      村の子供はみんな森の木で作られたオモチャで遊ぶんだ
      俺はたまたま、アレでよく遊んでた それだけのことだ
トリス:へえ…
 
 花火の音
リューグ:…敵かっ!?
トリス:違うわ、リューグ ほら、花火だって
リューグ:花火…
トリス:キレイでしょ?
リューグ:ハッ、まぎらわしい音させやがって…
      てっきり、召喚術かと思ったじゃねぇか
トリス:ねえ、リューグ…
     いつも、そんなに張りつめてて、本当に疲れないの?
リューグ:……
トリス:見ていて心配なのよ
     なんだか、今にも破裂しちゃいそうで
リューグ:余計なお世話だッ!
トリス:……
リューグ:俺は、好きでこうして生きてきたんだ
      今さら…変えられるかよ…
トリス:リューグ…
リューグ:さあ、お遊びの時間は終わりだぜトリス
      早いとこ戻って、稽古の相手をしてもらうからなっ!?




14話
トリス:アメルがアグラ爺さんの本当の孫娘じゃないってこと、リューグは知ってたのね?
リューグ:薄々とはな…
      もともと、ジジイの素性そのものが得体がしれねえんだよ
トリス:え?
リューグ:村の外から来たよそ者なのさ、あのジジイは
      俺らの親が、傷だらけだったアイツを山道で見つけて…
      この村で暮らせるよう面倒を見たらしい
      その恩があったから親をなくした俺たちを引き取ったんだろうな
トリス:(そうだったの…)
リューグ:他に俺が知っていることと言えばアイツが、かなりの武術の使い手だってことぐらいか
トリス:!?
リューグ:俺らの親が死んだのははぐれに襲われたせいなんだがよ
      そいつを倒したのがあのジジイだったんだ
      あの時のことは今でもよく覚えてる
      子供心にも、アイツがただのジジイじゃねえって思ったぜ…
トリス:それじゃあリューグに斧の使い方を教えたのも?
リューグ:俺だけじゃねえよ
      バカ兄貴の使う槍も自警団の連中もみんな、あのジジイが教えたもんなのさ
−やっぱり、おじいさんはただの木こりじゃなかったのね!?−


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