「クラレット。こっち、こっち」

そう言って、くん、と手を引っ張る。
決して彼女が痛くない程度の力で。

「早く。こっちだから」

そう言って、ぐん、と速度が速まる。
彼女に無理の無い程度の速さで。

「おいで。こっちだよ」

そう謳う一歩先を走る彼の人の横顔。
息を切らせながらも、決して止む事無い零れる笑み。


「もう少しだから、さ」

そう言ってほんの少し力が加えられた手を見る。

 日焼けした手。
 剣を握る手。
 躊躇い無く前へと伸ばされる手。
 護りたいと願う手。

その手が誘う。
その手が引き寄せる。
その手が導く。

光在る方へ。
光溢れる方へ。

誘われるまま、足取りは軽く。
誘われるまま、ひとしずくの不安も無く。
誘われるまま、笑った。

―何処にだって行きます。あなたと共に―




春日あこや様の絵を基にした詩です。
初めて拝見した時から絶対何か書いてやろうと決めてました。
(はた迷惑)
誓約者さんが差し出すその手はとても大きくて温かくて。
優しくて、強くて。
出来るのなら離したくない、そんな想いが垣間見れれば、と。


20040215UP

の十六   es op   の十八